続・レコーディング2極化


またも悲しい出来事が起こりました。
長年良く知るアーティストがお金が無かったらしく、個人のより安いレコーディングサービスでレコーディングをしました。
幸い発表前にバンドから状況、音源を聴くことが出来ましたのでMORGでやり直しをすることになったのですが、
例のごとく『散々な出来』だったわけです。しかもMORGよりは少しは安いとはいえ、そんなに変わらないコスト。

どう散々かというとバランスが悪いのはもちろん、オートメーションの形跡も無く、編集ノイズはプチプチいってるわ
全くもって一体全体何をどう仕事したのかって次元です。

これをCD-Rで2曲500円で売るって?

バンド始めたての高校生じゃないんですよ?
過去に全国流通盤も出していて某TV番組でも優勝して全国放送されてて、ミナミホイールも出て、最近も某コンテストで
優勝して、今やっとこさ新曲をレコーディングしてファンの皆さんに届けるってタイミングでこれはないでしょ?
こんなのわざわざCDじゃなくてマイスペースの試聴で十分お腹一杯っすよ?ユーザーを馬鹿にしすぎです。

仕事を請ける方も知らないバンドじゃないんだから自分の技量で出来るか出来ないか判断しましょうよ。

結果バンドが望む音にならず、NGになるって一人前な金額のお金をもらえるレベルじゃないでしょ?

こういった人はアマチュアやバンド始めたての高校生にはとても貴重な存在と思いますし、デモCDならいいと思うんです。
だからそういった点では全く責める気は無いです。どんどんレコーディングしてください。
ただし、こういったデモレベルの相場は大体曲単価1万円前後です。関西では大阪、京都でやってます。

一定のレベルを超えたバンドには多くの関係者がいて、最低限のレベルはクリアしていないとデモにも使えない
状態になるって事をわからないと結果バンドにも関係者にも迷惑がかかって自分の首を絞める事になります。

あるべきタイミングに、あるべきものが無い。

それって普通のお仕事の世界では賠償レベルのお話ですがいかがでしょうか?

デモレベルの製作と販売レベルの製作は全く次元が違います。
それは音質云々だけで判断されるものではなく、全てにおいて決定的に違っているのを知ってください。
とはいえ、それを知れるのは一定水準以上の仕事を請けるようになってからですのですぐには無理な話ですが…。

で、思ったんですが、個人レコーディング向けに私の思うレコーディングサービスの最低基準を書いておきます。

1、とりあえず電源ノイズとかルームノイズが過剰でない。

これらが酷いとほんとつらいです。あとクリップも酷いのはカンベン。

2、編集ノイズがプチプチいってない。

編集したらさっさとクロスフェード書いてください。

3、ピッチやキメは最低限リスナーが気にならないレベルに補正する。

全部アーティストのテイクのせいにしてたらアンタ何を働くねんって感じです。
インディーにありがちですが、テイク自体がよくない場合はしっかり指示してください。
メジャーでも半音違うとかは普通にありますが、当然表現の域で聴けないレベルじゃないです。
ただもちろんアーティストの意識が低いと無理なもんは無理ですが。

4、動的なオートメーションは書きましょう。

コンプかかって不自然な上にオートメーションもなかった日には盛り上がりも何も無いですよ。
バランスを取るって事は時間軸によって音量も変化するって事です。
例えばサビで盛り上がるなら盛り上がるように調整しましょう。
CメロとかがBメロが流れちゃうならディレイなりなんなりで演出しましょう。
曲に起承転結、序破急、その他流れをしっかりつけるのがミックスです。

5、締め切りは守りましょう。

アマチュアではルーズな仕事も多い気がしますがアーティストには旬もあるんでそこは考慮してください。

以上5点くらいです。これは鉄板で守って欲しいです。音質云々とかはそこからもっと先のお話です。

他にも色々ありますがまずはこの5つをしっかり確認してください。

これらが出来ていないとちょっとアマチュア過ぎるって感じですので、友人のお手伝いから始めましょう。

で、忘れちゃいけないのがそういった選択をしたバンドにも重大な問題があります。

何故そういう事態が起こるのか?

バンドもテープ媒体でデモテープ製作の時代からデジタルレコーディングでノイズ量なんかが減って、
編集も出来るようになって、いきなりプロレベルに音源が作れるとかそんな考え捨てましょう。
アレンジも演奏も稚拙な状態でどんなにいじくっても最高の仕上がりとか無理でしょ?

16歳で深い、万人の心にしみるブルースとか出来ます?枯れた音とか表現出来ますかね?

出来る人がいたとしてもそれはかなり特殊な例であって、失敗や挫折で人間性、技術を磨かなければ
どんなにデジタル技術が発達しても簡単に名演奏や心に届く音や歌は簡単には出せませんよ。

無論今回の件でもNG理由は音質や処理と同様に収録されているプレイのフォーカスがあってない
という事も大きな要因です。逆にフォーカスが合ってたらそこまできつく言いません。

結局自分の尺度や自分の都合で物事を考えて、自分のいる業界の仕組みもわからないから
不確定要素を楽観視し、結果お客さん、関係者、バンド自身にも迷惑がかかるわけです。

ハッキリ言ってそんな考えのバンドは絶対プロでやっていけないです。
うまいこといってプロになれたらいいな位の気持ちでプロになりたいとか言う事はプロに対して失礼です。
もちろん誰だって不安を抱えていますが、一定の時期からプロになる人間は覚悟と責任に目覚める気がします。
そして私の知る限りのプロミュージシャンは皆さん想像以上にストイックで、特化した能力を持っています。

これは本当に想像以上としか言えない、マンガにすら出来ないレベルでシビアな思考をされています。

そしてプロの世界で生きるということは当然ながら普通プロ同士で仕事をするわけです。

バンド、ライブハウス、エンジニア、レーベル、TV関係、ラジオ関係、雑誌媒体、様々な人間がいて、
それぞれプロ同士が信用を築いて、そうやって成り立っている業界内で自分の尺度が通るわけ無いです。

こんな事は社会の常識なんですけども。

そんなことがわからないお子様は残念ながら少なくないですし、私もかつてはもちろんお子様な考えだった
わけですが、私がそういったお子様思考を覆すきっかけとなった名言集を次節で書いてみます。

ちなみにこのバンドの音源は最終的に歌、鍵盤以外こちらでやり直しました。
が、結果何故こんな事になったのかを裏付ける程のバンドの意識の低さに疲れてしまいました。
こんな言い方も無いですが、もと聴かせてもらったクオリティーで十分納得な意識レベルでした。
いいバンドだけに本気で頑張ってるバンドに本気の意味を教わっていってくれるように願うばかりです。
とりあえずバンドさん。見てたらしっかり次節を読んでくれって感じです。