音楽業務における日本語としてのプロフェッショナルの定義の再考2017
今回はSNSなどで流れてきては様々な視点から語られる”プロ”について整理してみました。
・1 お金をもらったら(もらえたら、もらっている以上)プロ
提示した作業条件に対して依頼し、対価を支払う。スタジオ使用料にエンジニアが付随するような考え方ではスタジオを使用するということに代金が発生しているので定義の所在がわかりやすい。ここで言うプロとは提供と利用に対しての基本姿勢や良心、良識の意味合いが強い。
・2 その仕事だけで生計を立てていたらプロ
サービスをビジネス、職業として継続していくという経営や運営の観点。
もちろん顧客に対してサービスとして成立し、人気が出ると需要が生まれてビジネスとしてプロフェッショナルに継続が可能。対価を得ないとビジネスは継続しないのでビジネスとしては間違いなくプロ。個人事業主として国に開業届けを出したり、場合によって法人化した方が良かったりというくらい本業ということ。プロフェッショナルな事業者。
・3 技術やマインドがプロ
ここには名実ともに多くの人がプロと認識している方が多く存在する。文字通り何かの技術に特化していたり、その人にしか出来ないようなことを持っていたり、想像を超えるような経験と鍛錬を積んでいたりする。大体の方がそれらの技術にまつわることに人生の大半を費やしている。
技術があり、人気があると需要は増えるが、ビジネス的な感覚を持たない、あるいは運営が不得手な方も沢山いるのでマネージャーや事務所など経営や運営のプロが存在する。
という感じになりました。
まあどれもプロと言う分には間違った事を言ってるわけではないんですが、話している人達の所在によってその”プロ”意味する話題の範囲が変化しているということなのかなと思います。
これらとは別でいわゆる以下のようなプロの理想のような姿があると思われます。
・なんとなく想像しやすい理想のプロ
長く厳しい鍛錬を積みつづけており経験豊富、素晴らしい技術を持ちながら向上心に溢れ、新しい技術にもあかるく、その姿勢ゆえ人格も含み多くの人に求められ、日々を忙しく、しかし充実しながら過ごし、その日々を続けるゆえに技術は更に向上し、技術に見合った対価を得ることでその日々を継続し、新たな探求に投資し、更にプロフェッショナルとして、スペシャリストとして高みを目指しながら邁進する、がゆえに更になお需要は膨らみ忙しい日々を続けている。
ちなみにこういった場合、超人で無い限り一人では対応しきれなくなります。
(こういう方は職人気質というかついつい仕事をしてしまうので何でもやっていると決定的に体を壊すか死ぬまで働きます。)ですので何らかの対策や選択を迫られます。
一例として、
>一部業務を他の人に頼む。(マネジメント、スケジュール管理や窓口対応など)
>忙しくも充実した日々の中で他のプロフェッショナルと出会い意気投合、共闘する。
こういった選択につながり、会社や業界内に新たな息吹が芽生えていきます。
ここで挙げた”なんとなく想像しやすい理想のプロ”でなくともその中のいくつかの要件が重なると同様の状態は生まれます。
そこでビジネス的な見え方が強めの例えばの選択だと
>一人で捌くのが厳しいので人員と作業場を増やして負荷を分散し、クオリティをキープしつつ対応。
なるべく需要を断らずに組織や事業規模を拡大する。
>技術の継承として後進の指導にあたり、安定してサービスを提供できるように運営側にまわる。
のような感じです。
結構ややこしくなってきましたが、結局のところそれぞれのプロの定義は出世魚みたいな関係にあることが見えてきたのではないでしょうか?
・1 看板を掲げて奮闘する中で看板の重みを学び、看板からも学ぶ時期。
・2 看板を維持していくために奮闘し、初心にかえりながら顧客の満足という喜びと責任を覚え、高みを目指す時期。
・3 大きくなり、経年により傷みも増えた看板、自分自身を見直し、手入れしたり改良をくわえてさらなる高みへと目指しながら日々を奮闘する時期。
みたいなものなのかなと思います。
前回書いたコラムの「本来のレコーディング」というのは佐久間正英さんのブログで言われていた言葉を指します。
当時はお金をかけられないからいい音楽が作れないとか、老害とかひどい意見も出ていましたが、それはこの”プロ”という言葉同様にその記事や意見を受け取る人の立ち位置や先ほど挙げた時期によって大きく受け取り方が変わるものです。
今やブログやSNSにより、発信するという事は特に意識することもないくらい身近なものになりました。
また、情報を得るということもとても簡単になりました。
果たしてその先は何なのか。
そこまで大きな範囲でなくとも音楽業界においても専門職の専門性とAIやテクノロジーの進化などたくさんの変化と課題がこの先控えています。
その中でプロフェッショナルであり続けること、プロフェッショナルを育てること、プロフェッショナルを守っていくということはとてもやりがいがあることです。
真摯に考え、精進していれば多分何とかなると思っています。
長くなりましたがもし”プロ”になにかしら疑問を覚えた時などの参考になれば幸いです。
2017/10/14