MORGルーティング及びMIX、MASTERINGの再現性


MORGのルーティングやシステムについてエンジニア仲間から質問頻度が多いので記載します。
MORGは業界標準ProtoolsHD3Accel PCI-eを使用しています。
まずはシステムのIOですが、メインのADコンバーターはPrism Sound ADA-8XRで16CH対応です。
世界最高の名に偽り無い極上のインターフェイスですので主要な機材を繋いでいます。
サブにLYNX AURORA16、AURORA16はProtoolsHDに専用カードで直接接続されているため、
16AD、16DAに加えて16デジタルIN、デジタルOUTが使えます。
16CHあるアナログINは優先度の低い、そもそも大きく加工するような機材が繋がれています。
16CHのアナログOUTはSSLのサミングミキサーに繋がっています。
デジタルIN、OUTにはONYX800やMAXXBCL、Prism Sound AD-2、GRACEm904が接続されています。
ONYX800はトークバックマイク用に使用し、デジタルシンクの終端としてジッターの影響を引き受けます。
加えてAPOGEE ROSETTA800もProtoolsHDに専用カードで繋がれています。
ROSETTA800のインプットは大きく加工し、かつソフトクリップ機能が必要な機材が繋がれています。
アウトプットは予備2CH(リアンプやMIX時にアナログ機器に接続するアウトプット)とキューモニター系です。

ミックスは多くの場合SSLのサミングミキサーで信号を混ぜますが、レベルをいじることはほぼ皆無です。
信号レベルはProtoolsで管理しますので機材の暖気を行えば再現性は完璧です。
アナログアウトボードで信号を処理する場合もPrismのADとルビジウムクロックが来てからはジッターを
気にする必要がなくなったのでROSETTAから出した信号をアウトボードで処理し、ADA-8XRでProtoolsに
録音してしまいます。その後録音したもののレイテンシーを波形を見てあわせて完了です。
処理は録音してしまい、もちろん元のトラックも非アクティブにして置いておけますので再現性は100%です。

マスタリングにおいても再現性は当然100%可能です。
マスタリングEQ、COMPであるPrism Sound MEA-2とMLA-2はステップゲインですので、数値を
Protools内にメモっておきます。MAXX BCLも同じ0.1dbステップです。
やむをえずステップで無い機器を使う場合はシグナルジェネレーターとPAZでマッチングしますので
その値をメモしておきます。
たったこれだけでほぼ100%設定が再現できてしまうのでDAW内完結と利便性は変わりません。

リバーブにおいてはハードウェアリバーブであるLEXICON PCM96を使用していますが、
これはプラグイン上で制御できるため、普通にプラグインと同じ扱いで使用できます。

アウトボードを揃えれば揃えるほどアナログ主義で利便性が低いみたいに勘違いされますが、
利便性、効率はサウンドがいい事の次に優先されるものですので全く犠牲にしていません。
同時に利便性にかこつけて面倒な事を放棄する事もあり得ません。

とかく何でもアナログと思われがちですがミックス時において、もちろんプラグインは多用します。
マッセンバーグのEQなどはマストと思っていますし、最近のモデリングプラグインもわざわざ実機を買って
癖や使い方を研究し、そのあとその機器のプラグインの使い方を研究するくらいです。
こうすることで実機で出来る事、プラグインで出来ない事、実機で出来ない事、プラグインで出来る事が
より把握でき、非常に有意義な経験と共に、プラグインも有機的に扱えるように思います。
例えばWAVESのSSLやNEVEのモデリングは実機よりSNが悪くノイズが多かったりする事や、
PSA-1が実機ではありえないほどSNが良かったりする点などがあります。
実機を知らないと知らずにノイズまみれになったり、おいしい設定に出来ないもんです。
コンピューターの64BIT化もありますし、ものすごく今後のプラグインに期待しているだけに、実機を
楽しんで、プラグインも楽しむのが今のMORGのあり方です。
1176やLA-2Aなどの実機録音に同機のプラグインとかも非常に面白いですし。

とはいえ、いくら再現性が高かろうと最初の録り音が一番大事ですのでアウトボード、マイク、
コンバーターなど音の入り口は必須なわけですが。
後でどんな処理をしようとストラトの音がテレキャスやレスポールにならないのと一緒で、
RODEやU87aiで録音した音がU99BやM269cの音には絶対なりませんから。
極上のテイストがあるからこそ実機あるいはプラグインと使い分けることが出来るのだと思います。

若干脱線しますが、その意味でテイストの濃い機材、薄い機材があるのでちょこっと書くと、

濃い機材
NEVE系、Chandler系、LA-2Aや1176等
薄い機材
AMEK9098系、AVALON系(2055、747除く)、Prism系(AD-2除く)、

FocusriteもISA215は2から3Khzあたりの味付けは濃い気がします。
現行のFocusriteになると一気に2-3Khzにピークが出るいわゆる中国製サウンドに思うのは
僕だけでしょうか…。YAMAHAのプリのピーク違いという印象なんですが…。
海外ではめちゃめちゃ叩かれてますがたまに見るので要は使いどころなんでしょう。
ある種作られた音が出ているのでそこの好みなんでしょうね。
ちなみに古いISAはパリッとしててもピーク感は不思議とありません。
そしてEQが異常なほどいいので何とでも音を追い込めます。
ちなみに9098やAVALONになるとNEVEくらい味付けしようとしてもまず無理です。
VT737ならハイゲインモードでキャラは作れますが。
こういった味付けの薄い機材は味付けの済んだものへの最終段にまとめの意味で使うので、
いわゆるハイエンド機機への第一歩としてはあまりオススメできません。
第一歩はマイク、マイクプリあたりから始めたほうがハイエンド機の必要性を体感できます。
ちなみにPrismは味付けは薄いながら不思議なイギリスの空気のような清涼感を与えてくれます。
今でも使うたびにイギリスの事を思い出す程に確実な個性を持った機材です。
同じくORAMの製品にもイギリスの空気を感じますが、ややヨーロッパ、アメリカ寄りな感じです。
Prismは早朝のイギリス、ORAMは昼間のイギリスみたいな感じですかね。
もしORAM製品がステップゲインだったら手元に残してます。

いずれにせよ、これらの機器は積み重ねの後に空気を足すような存在ですので、
味付け不十分なものを加工する場合は別のもので加工し、そして最後に花を添えます。

いい音は全ての行程の積み重ねで出来上がるので、いい音を知り、体現するためには
結局のところ一からしっかり経験を積む事が一番の近道なわけです。
このあたりはまたいずれ何かに例えてわかりやすく説明します。

レコーディングは今や身近で誰でも簡単にエンジニアと名乗れる時代だからこそ、本当にいい作品を
素晴らしいアーティストと共に生み出していく為にMORGはあらゆる方向から向上し続けます。

2009年末追記

著名ミュージシャンや注目度の高いアーティストとのセッションの中、思い描くサウンドに
素早く到達できるようになれた2009年でした。
エンジニアの腕を磨くのは間違いなく素晴らしいミュージシャンとのセッションと確信しました。
素晴らしいサウンド、声を台無しにしないように、そして最高のものとして収録するための研究、
努力が大きな向上をもたらしてくれます。
そしてその経験が発展途上のミュージシャンを成長させ得るまっとうな知識となります。

人は己の知ることしか知らない。

この言葉の重みを知れる人間の何と少ないことかと思います。
知るって言っても経験するって事ですからあしからず。
そして経験、体験を消化してようやく知れるって事も補足しておきます。

アウトボード一つでも1176に至っては20台以上入れ替えて自分の好みの個体を選別し、
時に他人に合う個体があれば勧め、マイクに至っては恐ろしい数の試聴、購入、比較の後、
世界最高の職人のストック品に辿りついたりと、とことんこだわりました。
リズム録音においてもセッティング時間短縮、個体の相性まで考えて16CH以上の入力に
全て厳選したプリ、EQ、コンプを割り当てているスタジオなんてそうそうないです。
ただのブランド志向ではなく本気で厳選してるからこその極上機材です。
そしてそれらはMORGのサウンドにとってマストな存在であるからこそそこにあります。

そこに至るほどの情熱をくれたのは数々の著名アーティスト、大好きなバンドです。

MORGはこれからもより一層進化し続けます。

2009年は間違いなく一つの結実を迎えた年になりました。

2010年、東京、世界へと素晴らしいミュージシャンと共に羽ばたいて行きたいと思います。