現代における“エンジニア”とは?


レコーディングスタジオと呼ばれる場所にはサウンドエンジニアという人物が存在しています。
主な役割は設備を使い、レコーディングの進行を行うことです。
しかし、エンジニアによって同じスタジオでもサウンドや作品のクオリティーが大きく変化します。
ここではサウンドエンジニアというポジションの近代的解釈を書いてみます。

本来音楽のエンジニアは今ほど録音機器が便利ではなかった頃にレコーディング機器の操作や
テープの切り貼りなど今のハードディスクレコーディングから考えられないような難易度の高い作業を
行っていました。特に当時はアンドゥ出来ない機器など当たり前に存在していますからトラック管理や
パンチインも今のように簡単ではなく、少しのミスが致命的な事態を生んでいました。
そうした難解な操作に加えてマイク、機材の選定やセッティング、ミックス等も行っていたわけです。

まずはここでは昔はレコーダーを回すのも、特に編集、パンチインは今とは桁違いに難しかったために
レコーディング自体が今ほどお手軽な作業ではなかった事を認識してください。

そこで現代なのですが、ハッキリ言ってレコーダーを回して音を録音して波形を切り貼りして編集、
タイミングや音程も直してエフェクトをかけるなんて作業はほんの少しの学習で誰でも出来ます。
機材が進化して前述したようなリスクのある作業や物理的にテープを切るような作業はほぼ皆無になりました。

しかし、環境が進化すれば人間は必ず退化するもので近代のエンジニアの定義は腐敗しきっています。

ただレコーダー(MTR含む)を回して気軽に音を録音する人もサウンドエンジニアと名乗っていますし、
プロデューサー的立場の世界のトップエンジニアでも同様にサウンドエンジニアとされています。

そして近年特にアマチュア定義のレコーディングスタジオのみならず、中堅規模、老舗のレコーディングスタジオ
においてもサウンドエンジニアの技術力や意識の低下は深刻な事態であると思われます。

では近代のサウンドエンジニアないしエンジニアに求められる能力とは何か?ざっくり挙げると、
1.レコーディングセッティングの技術。
2.編集時の操作速度、ミックスのセンスとバランス能力。

こういった旧来からある技術に加えて、

3.OKテイクのディレクション能力
4.3に付随する音程、タイミングに対する認識精度

これはレコーディングが手軽になり、様々な人がレコーディングをする中で特に必要となりました。

5.作品の方向性やサウンドのディレクション能力
6.アレンジメントや演出のアイデア力

このあたりは特に近年必要とされているように思います。
もちろん、プロデューサーやアレンジャーがついているセッションもありますが。

と、細かいものやこの先を除くと最低限サウンドエンジニアとして現場で作業するうえでこれらの
能力は現代の特にアマチュア、インディーズのレコーディングにおいて必要であると思います。

熟練したプロミュージシャンは自分の演奏に迷いがありませんし、鍛錬も怠っていませんので3から6の
要素を自分自身で持っているケースが多々あります。

しかし、インディーズやアマチュアは迷いがあったり、知識や技術が十分に無い事もあります。
人によってはレコーディング時に編集作業を行わない事を美徳としている事もあります。しかし、技術の無い演奏を
そのまま録音し、バンドにその実力を理解させるようなレコーディングに大金をとるのは理解しかねます。
バンドが自己の技術を省みるならばライブ音源やリハスタの無料MTRやカセットデッキで十分です。
大金を払ってパンチインもろくに出来ず、向上もなく音程やタイミングもバラバラな音源が出来るわけです。
まして、ダビング録音であればドラムやベースがずれていてもエンジニアがOKを出したがゆえにずれたものに
楽器や歌を重ねていくというまるで拷問のような作業の果てにそれが出来るわけです。
そうして音源はともすればライブ会場などで販売されるのですがリスナーはどう思うでしょうか?
当然評価は散々です。バンドにも新たな進展など良い流れは起きず、最悪の場合解散に至ってしまいます。
この流れは悲しい事に間違いなく存在しています。

特にアマチュアやインディーズのレコーディングにおいては時にエンジニアがプロデューサー的な立場で
しっかりと製品を作るというスタンスを見せねばなりません。もちろんでしゃばりすぎはいけませんが、
たとえパンチインや編集の力を借りた音源であれ、自分の楽曲が作品として満足出来るものになれば、
今度はそれを編集無しでライブでも出来るように、より一層練習に励むという事は多々あります。
これはプリプロに近いレコーディングの話になりますが、今は未熟、あいまいで見えないものもエンジニアと共に
レコーディングし完成形を見出す事で明確に何をすべきかがわかり、そしてアレンジメントも完成するのです。

ただ機材を操作して音を録音するだけならそれはサウンドエンジニアではなく機材のオペレーターです。

レコーディングが身近になったからこそ忘れている事は本当にたくさんあります。
そして音源はバンド、アーティストの印象に大きく関わる第二の顔である事を忘れてはいけませんし、
音楽、音源は芸術作品であり、単なる音の集まりでは無いということを肝に銘じておかねばなりません。

MORGでは代表が様々な経験を経て芸術、学問に没頭し、とりわけ長年音楽と向き合い培った技術と精神はもちろん、
優秀な人材育成のためにアーティストへのエンジニア技術の伝授、ベテランエンジニアとの交流や技術交換、
様々な分野のアーティストとの交流を持ち、様々な責任ある仕事を行う中で技術レベルと意識レベルを保っています。
エンジニアの本質がアーティストであり、各所各人と高次元の連携が出来る事がMORGのエンジニアの最大の特徴です。

また、一線のプロの世界では当たり前であって、地方では見られないことが一つあります。
それはスタジオではなく、エンジニアに仕事を依頼し、エンジニアが狙いに応じてスタジオを選んで製作を行う事です。
一線のプロにはこのような慣習があるため、広く知識を身につけることが出来る上に、様々な経験や刺激を受けることが
出来ます。もちろんそれらエンジニアも自分のスタジオや製作スペースを持っており、機材を持ち込んだりもします。

大阪も含み地方都市ではこのような活動を行うプロのフリーエンジニアは数少なく、フリーエンジニアを受け入れ、
またそれに足る環境を持つスタジオも限られている事もあり、基本スタジオとエンジニアがワンセットになっています。
さらに大抵の場合エンジニアの所有するスタジオ、機材ではなく、オーナーがおり、エンジニアは雇われです。

そのため自分の知る環境、普段聴く音の範囲でしか音を認識できず、その地方で他のスタジオと比較試聴を行い、
その地方で一番音が良いなどという触れ込みで営業を行うようなスタジオもあるようです。

人は自分が知る範囲でしか物事を理解できません。いい音を作るにはいい音を体験し、体現する努力が不可欠です。
MORGでは代表自身が本当にいい音を運良く体験し、外部のスタジオを借りて製作を行いながら自宅環境を調整、
全ての環境、機材を自己で所有し、業界の活性化に向けて様々な活動を行ってきた経験からプロのフリーエンジニアに
スタジオ環境を開放し、所在地である関西におけるフリーエンジニアによる製作スタイルの定着に力を入れています。