ビンテージ機器は本当にメンテ管理が大変か?


最近MORGでの機材の入れ替えもいよいよもって終局に至ったと思います。
結果としてビンテージ機材が大半を占める結果となっていますが、
ビンテージに対して、多くの誤解が氾濫しているため、実際どのくらいメンテや
故障の頻度があり、SN等スペック的にどうかという情報を載せておきたいと思います。

まず、この6年ほどで故障したレコーディング機器は

UREI 1176 メーター動作不良(コンデンサーの劣化)
PURPLE AUDIO MC76 ノイズフロア上昇(コンデンサーの劣化)
AMEK9098EQ ノイズフロア上昇(コンデンサーの劣化、EQスイッチ劣化)
Prism Sound AD-2 動作不安定(ICの故障)
TUBE-TECH MP1A ノイズフロア上昇(真空管劣化)
AKG C-414EB 感度が異常に低い(接触不良)

という感じです。

例外として、Presonusのcentral stationが初期不良でヘッドホンが
モノラルになったことがあります。

ちなみにPrism以外は大体10000から30000円くらいで修理できました。

コンデンサーの交換程度なら大体10000円行くかどうか位でメンテできます。

Prismの場合は本国送りになると送料が70000円を超えるのでなかなかパンチが効いてきます。
とはいえ、そうそう壊れるものではないと思います。(MORGのはシリアル一桁なのでメンテ。)
また、修理期間中代理店から代替え機を貸していただけましたので仕事に影響は出ませんでした。
とりあえずイギリス製品は送料が高いというのは頭に入れておきましょう。

ノイズもかなりシビアに判断していますが、案外メンテ行きになるケースは少ないです。
ビンテージ機器は1176は別として、大抵SNが良く、現行のミキサーなんかとは比較にもなりません。
前述のメンテ行きレベルのノイズフロアは現行の家庭用ミキサー以下のレベルの話です。

ビンテージというとノイズがついてくるように思われる事もありますが、本当にいい機器はノイズと無縁です。

例えば終戦前のリボンマイク、RCA44BXを1960年代製造のTELEFUNKEN V76で
60dbブーストした音って一体どんな音か想像できるでしょうか?

009RCA44BX

v76

多くの人はハイ落ちして遠い音像かつ、サーっという古い映画のワンシーンような
ヒスノイズが乗ってる音を想像すると思います。

これ実は全然ハズレです。

余裕で静かなバラードをアカペラで歌ってもらって大丈夫なレベルでノイズは全く無いです。
普通にビックリするくらい音像も大きく、ものすごくリッチなサウンドです。

こういった事を知る機会自体が無いというか、そういう経験も無く自宅で音楽が出来て、
スタジオとかプロとか名乗れる時代が長く続いてしまったのでビンテージは誤解だらけです。

そして、本当に価値のあるビンテージとは、補修もこだわりの職人が存在するほど丁重に扱われ、
ともすれば現行商品よりも安心して修理、メンテナンスを依頼できるのが特徴です。
RCAにしても70年前のマイクでも今修理できますから。
結果、安心してお気に入りの個体を使い続けることが出来るわけです。

個体差うんぬん言う人もいますが、そんなのは所有したなら好みにチューンすればいいだけです。
そして、スタジオにあるもので個体的に気に入らないなら持ち込めばいいだけのことです。
逆にスタジオのものが気に入って購入し、その時の印象に調整するケースも多いと思いますし。

本当にいいビンテージは誰かが手放さないと手に入れることが出来ないので、MORGでは
多くの方から情報を頂き、大型スタジオからプライベートスタジオまで機材の買い付け、
機材導入のお手伝いなどを行っています。
結果、いい機材とめぐり合う機会が多くなっているのですが、固体に関して言えば、
大型スタジオのものはやはりアタリが多いように思います。
今よりもっと音楽業界が華やかだった時代やバブルの時代の機材が多いので、妥協も無いです。
ラックネジ一つとっても今の製品より重量があり、SM58や57も大抵現行と違うオールドのUSA製です。
同じ型番のようでも中身が違う(リビジョン等)機器が多いのも特徴です。

こういった情報はコンシューマーにはなかなか届かないので、色々と相談を受ける事が多いです。

ちなみに個人的にはプラグインを色々と使い比べたりしていますが、結局録り音がいいと、
当然ながらプラグインも印象が全然変わります。最近のは本気で凄いと思います。
同時に録り音がちゃんとしてないとそんなに言う程でもないなという印象になるのもうなずけます。

というわけで、ビンテージ=メンテが大変、個体差やノイズが気になる等は全然ないです。
どちらかというと真空管ギターアンプのほうがメンテナンス代がかかってます。

本当にこだわって作られたいい機材でのレコーディングは本当に楽しく、発見がたくさんあります。
こだわりのある方は是非いい機材を入手して素晴らしい音楽を制作してください。